サラリーマン向け税金 基本のキ!!
多くのサラリーマンは会社が行なってくれる年末調整で税額が確定するので、確定申告をする必要がありません。でも、会社がやってくれるので税額がどのように決まるのかを考える機会がなくなってしまい、あまり理解しないまま税金を納めている方もたくさんいると思います。そんな方のために税金の基本を解説したいと思います。
ポイント
- 税金は収入にではなく所得に対してかかる
- 所得税は超過累進課税、住民税は定率
- 自分の税率を知ることで収入や所得控除の増減の税金に対するインパクトが理解できる
- 年末調整されない控除や副業所得が一定額以上の場合は確定申告が必要
目次
1. 収入と所得
税金は所得に対してある計算を行なって計算されます。収入が多くても、その収入を得るためにかかったお金が多かったら手元に残るお金は少なくなりますよね。なので税金は収入に対してかかるのではなく、収入から必要経費を引いた額(所得)に対してかかるようになっています。
所得 = 収入 - 必要経費
事業を行なっていると収入=売り上げ、必要経費=原材料や加工費などというイメージで理解しやすいと思います。サラリーマンの場合、収入は会社が支払ってくれるお給料だとは理解できますが、サラリーマンの必要経費ってなんでしょう。年末調整で必要経費の申告なんてしてないですよね...
実はサラリーマンの必要経費は、給与所得控除という名称で収入に応じて計算されます。収入金額に対する給与所得控除額は以下の表のとおりです(国税庁の給与所得控除の説明から引用)。
例えば給与の支払い金額500万円の方の給与所得控除額は、以下のように計算されます。
500万円 x 20% + 44万円 = 144万円
その結果、給与所得は以下のように計算されます。
給与所得
= 給与収入(支払金額) - 給与所得控除額
= 500万円 - 144万円 = 356万円
2. 所得控除と税額控除
さて、給与収入から給与所得が計算できました。この給与所得をベースに税金の計算をしていくわけですが、人によって扶養する家族がいたり、生命保険に入っていたり、医療費がかかっていたり、個別に事情が異なります。このような事情を考慮して、税金負担を軽減してあげようという施策の一つに所得控除という制度があります。先ほど計算した給与所得から、所得控除額を差し引いて、課税所得を計算することになります。
所得税における所得控除は以下のようなものがあります。
上の表の左側は本人や家族の状況など、人に関する控除なので人的控除とも呼ばれます。通常人的控除と社会保険料控除、生命保険料控除、地震保険料控除は年末調整で申告するので、その他の控除の適用がない人は確定申告をする必要がありません。
所得から所得控除を引いた残りが課税所得となり、この課税所得に対して一定の税額計算を行なって税金の額を求めます。
所得 - 所得控除 = 課税所得
課税所得もとに税額計算→所得税額
税額計算については、4.税額計算にて説明しますが、上で計算された所得税額からさらに税額控除と呼ばれる金額を差し引いて申告納税額を計算します。代表的に税額控除に住宅借入金等特別控除(いわゆる住宅ローン控除)がありますが、住宅ローン控除も通常年末調整の対象なので、会社に申告をしておけば確定申告の必要はありません。
ここまでの説明をまとめると以下のとおりです。
収入 - 必要経費 = 所得
所得 - 所得控除 = 課税所得
課税所得を元に税額計算 → 所得税額
所得税額 - 税額控除 = 申告納税額
ここまで読んで、いくつか疑問を持たれる方もいるかもしれません。
- 本来年間の収入が決まらないと納税額は決まらないはずなのに、毎月のお給料から所得税が引かれているのはなぜ??
- 申告納税額って、申告しているつもりがないんだけど??
一方で、国税庁の申告納税制度のページには以下の記載があります。
国の税金は、納税者の一人一人が、自ら税務署へ所得等の申告を行うことにより税額が確定し、この確定した税額を自ら納付する申告納税制度を採用しています。
この申告納税制度が適正に機能するためには、第一に納税者が高い納税意識を持ち、法律に定められた納税義務を自発的に、かつ適正に履行すること(コンプライアンス<法令遵守>)が必要です。
源泉徴収と年末調整の仕組みはひとりひとりの手続の手間を省くという意味ではありがたい制度ではあるものの、制度を理解しようとする気持ちや納税意識を薄くしているという側面があるようにも感じます。制度を理解することで節税方法も理解できるようになるので、少しずつでも理解を進めていきましょう。
3. 所得税と住民税
副業などを行なっていない一般のサラリーマンの場合、所得に対してかかる主な税金は所得税と住民税です。住民税も所得税と同じような手順で税額が決まりますが、いくつか違いがあります。
所得税がその年の所得に対してその年の税額が決まるのに対して、住民税は翌年の税額が決まります。今年支払っている住民税は昨年の所得に対して税金を支払っているのです。新入社員は住民税が低く、2年目から住民税が増えてビックリしたり、退職しても翌年は住民税が高額のままだったりするわけです。
二つ目の違いは、所得控除や税額控除の種類・金額です。ちょっと細かいので詳細は省きますが、例えば所得控除の一つである配偶者控除は、所得税では38万円、住民税では33万円になっています。
三つ目の違いは税額計算です。詳細は次の章で説明します。
4. 税額計算
2章のまとめの部分で以下の説明をしました。
収入 - 必要経費 = 所得
所得 - 所得控除 = 課税所得
課税所得を元に税額計算 → 所得税額
所得税額 - 税額控除 = 申告納税額
この太字の部分、どんな税額計算をするのか、所得税、住民税の順で見ていきます。
まず所得税です。国税庁のホームページの所得税の税率の説明の中に以下の表があります。
この表を元に、課税所得金額 x 税率 - 控除額 の計算を行うことで所得税額が計算できます。具体的には、課税所得金額が350万円の場合、
3,500,000 x 0.2 - 427,500 = 272,500
となります。
ここで覚えておくべきことは、「課税所得が増えるほど税率が高くなる」 という点です。しかし、ただ増えるだけではなく、控除額を引くことによって一定額を超えた分のみに高い税率がかかるようになっています。例えば、課税所得金額が350万円の場合、195万円までは5%、330万円から195万円を引いた135万円分に対しては10%、330万円を超えた20万円分は20%の税額となるのです。
1,950,000 x 0.05 = 97,500
1,350,000 x 0.10 = 135,000
200,000 x 0.20 = 40,000
合計 97,500+135,000+40,000 = 272,500
最初に計算した値と一致しますね。
このようにある範囲の課税所得を超えた分だけに高い税率がかかるようになっており、超過累進課税制度と呼ばれます。
自分の課税所得がどの範囲の税率になっているのかを覚えておくことは重要です。例えば課税所得350万円の人は税率20%ですから、収入が10万円増えると所得税は2万円増えることになります。また、医療費控除などで課税所得が10万円減ると所得税は2万円減額されることになります。
次に住民税の税額計算です。住民税は所得割額と均等割額の合計として計算されます。
個人住民税 = 所得割額 + 均等割額
所得割額は課税所得に対してかかるものですが、所得税と異なり原則10% (道府県民税・都民税 4%、区市町村民税 6%) です。また、均等割額は課税所得の多寡にかかわらず原則5,000円 (国税である森林環境税 1,000円、道府県民税 1,000円、区市町村民税 3,000円) です。原則と言ったのは、所得割の税率を変えたり、均等割で独自の目的税を超過課税として行っている自治体があるからです。
収入の増減や所得控除の増減の住民税へのインパクトは原則10%なので、あなたの所得税の税率とともに覚えておくと良いでしょう。
5. まとめ
ここまで給与所得のみのサラリーマン向けに所得税、住民税の基本を解説しました。多くのサラリーマンは年末調整で税額が決まりますが、副業などで一定以上の所得がある人や、年末調整では行なってくれない控除を受ける場合は確定申告が必要になります。具体的には以下のような場合などです。
- 個人向け確定拠出年金(iDeCo)の掛け金を支払っている場合
- ふるさと納税で5自治体以上の自治体に寄付を行った場合
- 医療費控除を受けたい場合
- 上場株式等の譲渡損を損益通算したい場合
- 副業などで給与所得以外の所得が20万円以上ある場合
- 米国株式等の配当にかかる外国税額について、外国税額控除を受ける場合
私もこれから確定申告を行うので、その都度解説していきたいと思います。
--- 2025/03/28 追記 ---
確定申告は期限内に行いました。その経過については、下記の確定申告eTax入力の投稿で詳細を紹介しています。
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最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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