個人型確定拠出年金(iDeCo)で老後資金形成を行なっている方が増えてきています。しかし、さまざまな手続きが紙ベース、郵送となっていて不便を感じられていた方も多いと思います。
10月20日からiDeCoに関わる各種手続きがオンラインで可能になる「e-iDeCo(イーイデコ)サービス」が開始されました。最新のiDeCoの状況と、このe-iDeCoサービスの内容を確認してみます。
- iDeCo加入者は順調に増加しているが、特に昨年12月の制度改正時は加入者の増加が著しかった
- iDeCo加入者の85%が第2号加入者(国民年金第2号被保険者)である
- 第2号加入者の約半数が限度額近くを拠出している
- e-iDeCoサービスはiDeCoに関わる各種手続きをオンラインで行うことができる新しいサービスである
- 2027年1月に予定されている加入可能年齢と拠出限度額の引き上げを控え、より使いやすいサービスに進化していくことが期待される
iDeCoの最新状況
まずはiDeCoの最新状況を確認してみましょう。
国民年金基金連合会が11月4日に発表した「最新iDeCo加入者数等について(令和7年9月)」に掲載されているデータを確認してみます。
まずは全体傾向です。

国民年金基金連合会「確定拠出年金統計資料 (2024年3月末基準)」のデータを引用して作成
ここで、運用指図者とは掛金の拠出は行わず、運用のみを行なっている人を指します。近年順調に加入者が増加していることがわかります。
さらに11月4日に公表された9月末までの直近の加入者の推移を見てみます。

国民年金基金連合会「加入者数等について(令和7年9月時点)」のデータを引用して作成
加入者は増加していますが、若干伸びが鈍化しているようにも感じられます。
もう少し細かく、2023年度から月別の加入者数を見てみます。

国民年金基金連合会「加入等の概況(令和7年9月時点)」のデータを引用して作成
2023年度に比べて、2024年度、2025年度の加入者数は若干下回っていることが読み取れます。一方で、2024年12月に突出して加入者が増えていますが、これは企業年金・共済加入者のiDeCoの掛金の上限額が最大2万円に引上げられたことによるものと考えることができます。
さて、iDeCoの加入者を加入者区分別に見てみましょう。iDeCoの加入者は以下の区分に分かれています。
| iDeCo加入者区分 | 対象者 |
|---|---|
| 第1号加入者 | 国民年金の第1号被保険者 |
| 第2号加入者 | 国民年金の第2号被保険者 |
| 第3号加入者 | 国民年金の第3号被保険者 |
| 第4号加入者 | 国民年金に任意で加入している方 (60歳以上65歳未満の方、または、20歳以上65歳未満の海外居住者の方で、国民年金の保険料の納付済期間が480月に達していない方) |
iDeCo公式サイト「iDeCo(イデコ)の加入資格・掛金・受取方法等」より引用
上記加入者区分別の加入者は以下のようになっています。

国民年金基金連合会「加入者数等について(令和7年9月時点)」のデータを引用して作成
厚生年金に加入されている第2号被保険者、およびその配偶者である第3号被保険者で約9割を占めていることがわかります。
iDeCoの拠出限度額は上記区分毎、および国民年金基金や企業年金の加入状況により異なり、現在は以下のようになっています。

このような状況の下、加入者区分別の拠出額はどのようになっているでしょうか。第1号加入者から順に見ていきます。

国民年金基金連合会「加入等の概況(令和7年9月時点)」のデータを引用して作成
1万円未満と限度額まで積み立てている人が多く、その他はキリの良い1万円、2万円、3万円、5万円と続いています。
続いて第二号加入者です。

国民年金基金連合会「加入等の概況(令和7年9月時点)」のデータを引用して作成
第2号加入者については、拠出限度額が低いので限度額まで拠出している人が多く(約半数)、続いて1万円程度となっています。
続いて第3号加入者です。

国民年金基金連合会「加入等の概況(令和7年9月時点)」のデータを引用して作成
第3号加入者は第2号加入者の配偶者なので、第2号加入者と傾向は似ています。限度額まで拠出している方と1万円程度拠出している方に分布が割れています。
最後に第4号加入者です。

国民年金基金連合会「加入等の概況(令和7年9月時点)」のデータを引用して作成
第4号加入者は、限度額まで拠出されている人が多く見られます。国民年金任意加入者であり、老後資金形成に意欲のある方が多いようです。
最後に、最も加入者が多い第2号加入者について、年齢別の拠出額を確認してみます。

国民年金基金連合会「制度の概況(令和7年3月末現在)」のデータを引用して作成
収入がある程度あると想定される40歳以上の人で、限度額まで拠出されている人が多いことが読み取れます。
e-iDeCo(イーイデコ)サービス
iDeCoは順調に加入者を伸ばしてきていますが、加入手続きや各種変更手続きが紙ベース、郵送ベースで、煩わしいとともに時間がかかっていました。この状況を改善するサービスが今回紹介する「e-iDeCo(イーイデコ)サービス)」です。
「e-iDeCoサービス」により、以下の手続きがオンラインでできるようになります。
- 毎月の拠出金額の変更
- 住所・氏名変更
- 被保険者種別変更
- 引き落とし口座変更
- 資格喪失届
- 控除証明書の受取り
e-iDeCoサービスは、マイナポータルを利用したサービスです。サービス利用までの流れは以下のとおりです。
以下を事前に準備しておきます
- マイナンバーカード
- スマートフォンまたはICカードリーダライタ付きパソコン
- 利用者証明用電子証明書パスワード(数字4桁)
- 券面事項入力補助用パスワード(数字4桁)
すでに登録済みの場合は次のステップへ
すでに作成済みの場合は次のステップへ
私も上記ステップを踏んでe-iDeCoサービスの利用を開始しました。私の場合、マイナポータルの登録とe-私書箱のアカウント作成は済んでいたので、10分ほどで利用開始までの手続きが完了しました。利用開始までの詳細ステップについては、「e-iDeCoサービスサービス利用の手引き」をご覧ください。
なお、e-iDeCoサービスにログインするにはマイナンバーカードの読み取りが必要です。
なお、iDeCoの拠出額の変更については、いくつか注意点があります。
まず、拠出限度額の範囲内で1年に1回だけ変更できることになっています。この場合の1年は拠出単位期間のことで、12月から翌年11月分の掛金、納付月では1月から12月の期間になります。
郵送で変更届を提出していた時には、金融機関が変更届を受領後その反映に1ヶ月以上時間がかかっていたようですが、e-iDeCoサービスで申請する場合は、毎月20日までに受付した変更は翌月に引き落とされる掛金に関して変更が適用されるとのことです。
また、数ヶ月分の掛金をまとめて納付したり、特定の月だけ掛金を増額・減額したりする月別掛金のケースや、月別掛金から毎月定額に変更するケース、他の年金制度の変更を含むケースはオンラインでは変更できないようです。
- iDeCo公式サイト「e-iDeCoサービス 開始のお知らせ」
- iDeCo公式サイト「e-iDeCoサービスサービス利用の手引き」
- 「e-iDeCoサービスマニュアル」
予定されているiDeCoの制度変更
iDeCoはさらに使いやすくなる制度変更が2027年1月から予定されています。制度変更のポイントは、加入可能年齢の引き上げと、拠出限度額の引き上げです。
まず加入可能年齢については、70歳までに引き上げられます。

厚生労働省「年金制度改正法が成立しました」より引用
加入要件から「国民年金被保険者」が外れ、個人型確定拠出年金の加入者または運用指図者であった人、私的年金の資産を個人型確定拠出年金に移換できる人で、老齢基礎年金やiDeCoの老齢給付を受給していない人は70歳まで加入できることになります。
もう一つの拠出限度額の引き上げは、以下のようなイメージになります。
現行と見直し後の拠出限度額は上の図のようになります。サラリーマン(第2号被保険者)の拠出額が大幅に増えると同時にわかりやすくなります。
この表には現れていませんが、被保険者でない70歳までの方も加入可能になり、その人の限度額は月額6.2万円になります。
なお、iDeCoの制度変更の背景や内容については、以下の投稿でも解説していますので、参考にしてください。
まとめ
最新のiDeCoの加入状況を確認した後、新しく始まったe-iDeCoサービスについて解説しました。2027年の制度改正では、拠出上限や加入可能年齢が引き上げられ、さらに使いやすい制度になる予定です。e-iDeCoサービスも、より使いやすいサービスへ進化していって欲しいと思います
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
1級ファイナンシャルプランニング技能士
CFP®️認定者
1級DCプランナー


