サラリーマンの方で、アメリカで駐在経験のある方は、条件を満たせばアメリカの年金を受給できる可能性があります。私もアメリカに2回、トータル6年強の駐在経験があり、米国の年金の申請を行おうと考えています。
今回は、米国の年金を受給するには、どんな条件を満たす必要があるのか、どんな申請が必要なのか、確認していきます。
- 社会保障協定が締結されている国とは、老齢年金の保険料の二重払いが防げるとともに、加入期間の通算ができる
- アメリカの場合、1年半以上働き社会保障税を支払い、日米での通算加入期間が10年以上あれば年金の受給権が得られる
- アメリカ年金の申請は、日本の年金事務所でできるので、忘れずに申請したい
社会保障協定
日本から外国に派遣されて就労した場合、日本の年金制度と相手国の年金制度に対して二重に保険料を支払うことになります。また、老齢年金の受給資格のひとつとして、一定期間の制度への加入を要求している場合がありますが、短期間の派遣の場合受給資格要件を満たすことができない場合が多いため、年金受給資格を確保できません。
これらの問題を解決するために、日本は各国と以下の2つを主な内容とした社会保障協定を締結しています。
- 適用調整
相手国への派遣の期間が5年を超えない場合には、当該期間中は相手国の法令の適用を免除し自国の法令のみを適用し、5年を超える場合には、相手国の法令のみを適用する。- 保険期間の通算
両国間の年金制度への加入期間を通算して、年金を受給するために最低必要とされる期間以上であれば、それぞれの国の制度への加入期間に応じた年金がそれぞれの国の制度から受けられるようにする。
厚生労働省「海外で働かれている皆様へ(社会保障協定)」より引用
日本は各国とこの社会保障協定を締結しています。

厚生労働省「社会保障協定の締結状況」(PDFファイル)より引用
- 厚生労働省「海外で働かれている皆様へ(社会保障協定)」
- 厚生労働省「社会保障協定について」(PDFファイル)
- 厚生労働省「社会保障協定の締結状況」(PDFファイル)
アメリカとの社会保障協定と年金制度
アメリカとの間では、平成17年(2005年)10月1日に日米社会保障協定が発効されています。
協定締結前は、アメリカでの就労が10年に満たない場合は、社会保障税(Social Security Tax)を支払っても年金を受け取ることができませんでした。この協定の締結により、一方の国の保険期間だけでは期間要件を満たない場合でも、通算することで期間要件を満たせば、給付が受けられます。
アメリカの年金の期間要件は、以下のようになっています。
- 米国で原則1年半(6クレジット)以上働き、社会保障税を払っている。
- 日米での年金制度の加入期間を足すと10年(40クレジット)以上あること。
※クレジット:1クレジットは日本の年金加入期間の3ヶ月分に相当
ということですので、アメリカでの駐在経験が1年半以上あれば、通算して年金の受給権を得られる可能性があることになります。
退職年金の満額受給年齢は生まれた年によって異なり、67歳まで段階的に引き上げ中です。
また、退職年金受給者に65歳以上の配偶者(67歳まで段階的に引き上げ中)や18歳未満の子がいる場合に、退職年金の50%に相当する額を「家族年金」として受けることができます
さらに、退職年金及び配偶者の家族年金の受給開始は、最高で62歳まで繰り上げすることが可能ですが、日本の制度と同様に、繰り上げた年金は、生涯にわたって減額されます。また、受給開始年齢を繰り下げることも可能で、その場合は一定の率で増額されます。
生まれた年 | 受給開始年齢 |
---|---|
~1937年 | 65歳 |
1938年 | 65歳2ヶ月 |
1939年 | 65歳4ヶ月 |
1940年 | 65歳6ヶ月 |
1941年 | 65歳8ヶ月 |
1942年 | 65歳10ヶ月 |
1943年~1954年 | 66歳 |
1955年 | 66歳2ヶ月 |
1956年 | 66歳4ヶ月 |
1957年 | 66歳6ヶ月 |
1958年 | 66歳8ヶ月 |
1959年 | 66歳10ヶ月 |
1960年~ | 67歳 |
厚生労働省「アメリカ年金制度の概要」より引用
- 厚生労働省「アメリカ年金制度の概要」
アメリカ年金の申請方法
アメリカ年金の申請は、日本にいながら行うことができます。アメリカの年金の請求は、日本の年金事務所または年金相談センターの窓口で、受給開始年齢の3ヶ月前から行うことができます。
アメリカの年金を請求する場合は、「合衆国年金の請求申出書」に、アメリカ社会保障番号(Social Security Number)、氏名、生年月日、住所など必要事項を記入し提出します。この申出書に必要な添付書類は、戸籍謄(抄)本、基礎年金番号通知書(年金手帳含む)または年金証書の写しとなっています。
行った申請は、日本年金機構を経由して、合衆国大使館領事部年金課に送付されます。後日、合衆国大使館領事部年金課の日本語を話せる職員から、記載した電話番号に電話があり、アメリカ年金請求の聞き取りが行われます。
アメリカの年金は、毎月1回、支払いが行われます。日本に在住している人は、以下の方法から選択して、アメリカの年金を受給することができます。
(1)日本円による、日本国内の銀行口座への振り込み
(2)米ドルによる、アメリカ国内の銀行口座への振込み
申請から受給が決まるまで数ヶ月はかかるようなので、気長に待つしかないようです。
- 厚生労働省「協定相手国別の注意事項(アメリカ)」
- 厚生労働省「日・アメリカ社会保障協定 申請書一覧(年金請求手続き)」
まとめ
アメリカ駐在経験のある方向けに、アメリカの年金申請について解説を行いました。受給権のある方は、面倒でも申請を行うことをお勧めします。
私はまだ日本の年金も受給しておらず、アメリカの年金申請は少し先になりますが、忘れずに申請したいと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
1級ファイナンシャルプランニング技能士
CFP®️認定者
1級DCプランナー